この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。

大腸がんとは

大腸がんは大腸にできる悪性腫瘍で、日本では年間約15万人が大腸がんと診断されています。日本における大腸がんの発症率は増加傾向にあり、がんによる死亡原因でも長年上位を占めています。初期には自覚症状が少なく、見逃されやすい疾患です。進行すると、便に血が混じる、便が細くなる、便秘や下痢を繰り返す、残便感が続くなどの症状が現れます。さらに貧血や体重減少、お腹の張りが出てくることもあります。ほとんどの大腸がんは大腸ポリープから発生するため定期的な大腸カメラを行い、ポリープを切除することが予防につながります。

下記のような症状に心当たりがある場合は、早めの検査をおすすめします。

  • 便に血が混ざる
  • 便が細くなる
  • 下痢と便秘を繰り返す
  • お腹の張りが続く
  • 体重が急に減少する

大腸がんの原因

大腸がんの原因は、食生活や生活習慣、遺伝的要因が複雑に絡み合っています。高脂肪で食物繊維の少ない食事、過度の飲酒、喫煙、運動不足、肥満は発症リスクを高めるといわれており、食生活の変化が進み、疾患増加に関与していると考えられています。また、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患では大腸粘膜の炎症が長期間続くため、発症リスクが高まるとされています。家族に大腸がん患者がいる場合も注意が必要です。大腸ポリープが放置されるとがん化する可能性もあるため、定期的な大腸カメラなどによる検査が推奨されています。

大腸がんの症状

初期には自覚症状が少ないですが、進行すると便に血が混じる、便が細くなる、便秘や下痢を繰り返す、残便感が続くなどの症状が現れます。さらに貧血や体重減少、腸が詰まることによりお腹の張りが出てくることもあります。

大腸がんの検査

大腸がんを発見するには、血液検査、便潜血検査、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)、CT検査などが行われます。便潜血検査は比較的簡易に受けられますが、精度が高いのは内視鏡検査です。現在の内視鏡検査ではAIの導入や拡大(顕微鏡)、特殊光により発見、診断が行えるだけでなく、ポリープが見つかればその場で切除することができ、早期発見と予防に役立ちます。症状がなくても、40歳を過ぎたら定期的な検査を受けることが望ましいです。

大腸がんのステージ

大腸がんはステージ(病期)によって治療法が異なります。ステージ0は粘膜内にとどまる早期がん、ステージI・IIは腸壁内に留まっています。ステージIIIは周囲のリンパ節への転移、ステージIVは肝臓や肺など他の臓器への遠隔転移を伴います。ステージが進むほど治療は複雑になり、完治の可能性も下がるため、早期発見、早期治療が重要です。

大腸がんの治療

ステージにより異なります。早期であれば内視鏡で切除が可能であり、1週間ほどの入院で治療が可能です。進行がんでは手術となり、進行度に応じて腹腔鏡手術や開腹手術、ロボット支援手術などを選択します。さらに進行し手術が難しい場合は抗がん剤治療を行い、進行を抑制することを目指します。

早期発見と早期治療介入が、完治につながる可能性を上げるため定期的な検査での拾い上げを行うことが重要です。

大腸がんの予防

大腸がんの予防には、バランスのとれた食事、適度な運動、禁煙、節酒が大切です。特に野菜や食物繊維を多くとり、動物性脂肪は控えめにしましょう。肥満を防ぎ、適正体重を維持することも重要です。以下のポイントを生活習慣に取り入れ、定期的な検診を受けて早期発見につなげてください。

  • 食物繊維を十分にとる
  • 脂質を控えめにする
  • 禁煙・節酒を心がける
  • 適度な運動を続ける 定期的に大腸内視鏡検査を受ける

当院Drよりひとこと

大腸がんは食生活の変化もあり疾患数は増加していますが、早期発見・早期治療で治る可能性が高い疾患です。症状がないからと油断せず、年齢に応じて定期的な検査を受けることが大切です。当院では内視鏡専門医が最新の内視鏡機器やAIを使うことで大腸ポリープの発見精度向上に努めており、ポリープの日帰り切除手術にも対応しております。気になる症状があれば早めに相談し、生活習慣を見直しや検査を検討しましょう。