この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。

大腸憩室出血とは

大腸憩室出血とは、大腸の壁の一部が袋状に飛び出た憩室(けいしつ)から突然出血する疾患です。憩室は加齢とともにできやすく、50代以上では多くの人に見られますが、通常は症状がありません。しかし憩室の近くを走る血管が傷つくと、大量の出血を引き起こすことがあり、血便に驚いて来院される方が少なくありません。大腸の血便の原因としては比較的多く、適切な処置を行えば多くの場合は完治が可能です。

大腸憩室出血の症状

大腸憩室出血の症状は、なんといっても突然の大量の血便です。下痢のように水っぽい鮮血や暗赤色の便が出ることが多く、腹痛はほとんどないか、あっても軽度です。多くは自然に止血されますが、持続的に出血してしまうこともありその際はふらつきや意識障害などの貧血症状が出現することもあります。

大腸憩室出血の原因

憩室は腸の内圧が高くなることで壁が弱い部分から飛び出し、袋状になります。加齢や便秘、腸の動きの変化が主な原因です。憩室のすぐ近くを走る血管が破れて出血することが原因です。とくに高齢の方や抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を内服されている方は注意が必要です。

  • 慢性的な便秘や強いいきみ
  • 加齢による腸の壁の脆弱化
  • 高血圧や動脈硬化
  • 抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)の服用

大腸憩室出血の治療

大腸憩室出血の治療は、内視鏡検査で出血している場所を探し、止血を行うことです。多くは内視鏡で止血できれば自然に改善しますが、出血量が多いと貧血が進むため、輸血が必要になることもあります。また、内視鏡で止血できない場合や何度も再出血を繰り返す場合には、カテーテル治療や外科的な手術を検討することになります。

大腸憩室出血の予防

憩室自体を完全に防ぐことは難しいですが、腸の内圧を高くしない生活習慣が予防につながります。

  • 食物繊維を適度にとって便秘を防ぐ
  • 水分を十分に摂取する
  • いきみすぎないよう排便習慣を整える
  • 高血圧や動脈硬化のコントロール

当院Drよりひとこと

憩室出血は突然の血便をきたすため驚かれて受診される方が多いです。基本的には良性の疾患であるため、適切な対応を行うことで完治します。しかし血便の原因を調べることは大切なため、安易に判断せず医療機関を受診するようにしてください。当院では、消化器病と内視鏡専門医が、血液検査での貧血の有無、内視鏡検査による出血原因の特定、状況に応じた輸血などの必要性の判断を行います。血便症状を認めた際には、早めに受診し相談して頂けたらと思います。