この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。
目次
腸閉塞(イレウス)とは
腸閉塞(イレウス)とは、何らかの原因で腸の内容物(食べ物やガス)が腸の中を正常に流れなくなる状態のことです。腸が詰まったり、腸の動きが止まったりすることでお腹が張り、吐き気や腹痛、便やガスが出なくなるなどの症状が起こります。長期間その状態が継続すると腸の血流が悪くなり、腸が壊死してしまい緊急手術が必要になることもあるため、早期発見と治療が大切です。過去に手術歴がある方は癒着が起こっていることも多く、便秘と勘違いしてしまうことがあるため注意が必要です。
腸閉塞(イレウス)の原因
腸閉塞(イレウス)の原因はさまざまです。代表的なものには次のようなものがあります。
- 手術後の癒着(お腹の中の臓器や腸同士がくっついてしまう)
- 腫瘍(がん)による腸の閉塞
- 腸管の炎症や腫れ
- ヘルニア(腸が腹壁から飛び出して締めつけられる)
- 捻転(腸が絡まってしまい捻じれてしまう)
- 異物(硬い食べ物や胆石など)
腸閉塞(イレウス)と便秘・下痢の違い
「便秘とどう違うの?」「下痢が出るのに腸閉塞?」と疑問に思う方もいるかもしれません。便秘は大腸の動きが低下し便が出にくい状態ですが、腸閉塞は腸のどこかが物理的または機能的に詰まって通れなくなる状態です。腸閉塞では、完全に腸が閉塞していると便もガスも出ませんが、腸が部分的に詰まっている場合は腸の上流にたまった水分で下痢のような便が少し出ることもあります。「下痢が出るから大丈夫」と自己判断せず、激しい腹痛やお腹の張り、嘔吐などがある場合は早めに医療機関を受診してください。
腸閉塞(イレウス)の診断方法
嘔吐や腹痛症状で受診されることが多く、血液検査と腹部X線検査を行います。X線では腸閉塞があると特徴的な所見(二ボー像)を認めることが多いです。また腸が閉塞することで圧力が上がり腸炎を引き起こすため血液検査で炎症高値も認めることがあります。このような所見から腸閉塞が疑われる際は早めの診断と治療が必要になるため、腹部CT検査を行い確定診断につなげていきます。
腸閉塞(イレウス)の種類と特徴
腸閉塞(イレウス)には大きく分けて2つの種類があります。
- 機械的イレウス 腸が物理的に詰まっている状態です。
腸の癒着、腫瘍、ヘルニア、異物などが原因です。 - 機能的イレウス(麻痺性イレウス)
腸に詰まりはないものの、腸の動き(蠕動運動)が止まってしまう状態です。腹膜炎や重い感染症、糖尿病による神経障害などが原因になります。
腸閉塞(イレウス)の治療
腸閉塞(イレウス)の治療は原因と重症度によって異なります。閉塞部位のない一時的な麻痺性イレウスや軽症の場合は、絶食と点滴で腸を休ませ、鼻から胃に管を入れて腸内のガスや内容物を吸引して減圧を行う保存的治療が行われます。一方腫瘍による閉塞や一定期間保存的治療で改善が乏しい場合は、イレウス管挿入術(小腸まで長い管を入れる)やステント留置術、手術加療を行うこともあります。
絞扼性イレウス(血流障害を伴う)を疑う場合は腸管壊死をきたすため緊急手術となります。
当院Drよりひとこと
腸閉塞は初期症状が便秘と似ています。過去に既往がある方や手術歴がある方は繰り返してしまうことも多い疾患です。また他の疾患で腸の動きが悪くなり起こってしまうこともあるため、その原因を調べることは重要です。再発は食事の仕方や生活習慣の工夫で予防できることも多いですし、大腸がんによるものは大腸カメラを行うことで診断、治療につなげることができます。便秘症状が続く場合やいつもと違う腹痛がある場合は早めに相談をしてください。当院では消化器病専門医と指導医を持った医師が適切な対応を行いますので、気になる症状がある方はご相談ください。