この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。

胆のう炎とは

胆のう炎とは、肝臓の下にある胆のうに炎症が起こる病気です。胆のうは、脂肪の消化を助ける胆汁を一時的にためておく袋のような臓器で、胆汁は肝臓で作られます。

胆のう炎の多くは、胆のう内にできた結石(胆のう結石)が胆のうの出口をふさいでしまい、胆汁の流れが滞って感染や炎症を引き起こす「急性胆のう炎」です。放置すると胆のうが壊死したり、周囲の臓器に炎症が広がったりすることがあるため、早期診断と治療が重要です。

胆のう炎の症状

胆のう炎の主な症状は、突然の右上腹部の強い痛みです。痛みは背中や右肩に放散することもあり、動くとさらに強くなることがあります。痛みに加えて、発熱、吐き気、嘔吐、寒気などの全身症状が出ることが多く、軽い胃腸炎と誤認されることもあります。

進行すると、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が現れたり、腹膜炎を引き起こしたりすることもあり、迅速な対応が求められます。

胆のう炎の原因

最も多い原因は、胆のう結石が胆のうの出口(胆のう管)をふさぐことです。これにより胆汁の流れが悪くなり、細菌感染が起こると炎症へと進展します。

ほかには、絶食状態が長く続いたり、糖尿病・高齢者で胆のうの動きが低下している場合には結石がなくても炎症を起こすことがあります。これを「無石性胆のう炎」と呼びます。

胆のう炎の診断基準

胆のう炎の診断は、主に症状、身体所見、血液検査、画像検査をもとに行います。右上腹部の圧痛や発熱があり、超音波検査(エコー)で胆のうの腫れや胆石が確認されれば、診断がつくことが多いです。

また、「Murphy徴候(マーフィーちょうこう)」と呼ばれる、右肋骨の下を押した際に痛みで息が止まる反応が見られると、胆のう炎が強く疑われます。

胆のう炎の血液検査

血液検査では、白血球数やCRP(炎症の指標)が上昇しているかを確認します。また、肝機能の異常(AST・ALT・ALP・γ-GTPなど)や、胆汁の流れを反映するビリルビン値もチェックされます。感染を起こしていれば、これらの数値が大きく上昇することが多く、治療の経過を見る上でも血液検査は重要な指標となります。

胆のう炎の治療

治療は、症状の重さや全身状態に応じて判断されます。軽度の胆のう炎であれば、抗生物質による点滴治療で炎症を抑え、絶食や安静といった内科的管理で回復を図ることも可能です。

ただし、痛みや炎症が強い場合や再発リスクが高い場合には、胆のうを手術で摘出することが推奨されています。特に胆のう結石が原因であれば、再発を防ぐ意味でも根本的な治療として手術が行われることが多いです。

胆のう炎の手術と入院期間

手術は「腹腔鏡下胆のう摘出術」が主流で、小さな切開部からカメラと器具を入れて胆のうを摘出します。身体への負担が少なく、術後の回復も早いのが特徴です。

入院期間は通常3〜5日程度が目安ですが、炎症が強く膿がたまっている場合や高齢者では、経過を見ながら入院が1週間以上になることもあります。状態によっては、まず抗生剤で炎症を抑えてから、改めて予定手術を行う「待機的手術」が選択されることもあります。

胆のう炎で食べてはいけないもの

胆のう炎の治療中および治療後の食事では、胆汁の分泌を刺激するような食品は避けたほうが良いとされています。とくに以下のような食品には注意が必要です:

  • 脂肪分の多い揚げ物やバター、肉の脂身
  • 卵黄やマヨネーズなどのコレステロールが多い食品
  • 香辛料や刺激の強い食品
  • アルコールやカフェインの多い飲料

食事は消化にやさしいものを少量ずつ摂るようにし、脂質はできるだけ控えめにすることが胆のうへの負担を減らすポイントです。術後も医師や栄養士の指導に従いながら、段階的に食事を戻していきましょう。

胆のう炎は早期であれば比較的治療がしやすい疾患ですが、進行すると腹膜炎や胆のう破裂などの重篤な状態に陥ることもあります。右上腹部の痛みや発熱、吐き気といった症状が続く場合は、我慢せずに早めの受診をおすすめします。当院では、血液検査や腹部エコーによる迅速な診断、必要に応じた専門医との連携による治療方針の決定まで、丁寧に対応しております。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。