この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。
粘膜下腫瘍とは
粘膜下腫瘍(submucosal tumor: SMT)は、消化管の内腔を覆う粘膜の下層に発生する腫瘍性病変を指します。通常のポリープとは異なり、表面の粘膜は正常に見えることが多く、内視鏡検査などで隆起性病変として発見されます。良性と悪性の両方の可能性があり、適切な診断と経過観察、治療が求められます。特に消化管間質腫瘍(GIST)は転移リスクもあり、切除が推奨されています。
粘膜下腫瘍の症状
粘膜下腫瘍は基本的には無症状です。そのため内視鏡検査などで偶然指摘されることが多いです。悪性化するなどして腫瘍が増大すると表面構造が破綻し出血を起こし、貧血や黒色便を引き起こすことがあります。
粘膜下腫瘍の検査
内視鏡検査が最も推奨されます。時折バリウム検査での指摘や大きさが大きくなるとCT検査で指摘されることもあります。定期的な内視鏡検査による形態や大きさの評価が重要です。
また最近では超音波内視鏡検査(EUS)も注目されています。超音波内視鏡検査により腫瘍成分の評価や穿刺(EUS-FNA)による病理診断も積極的に行われるようになりました。特に2cmを超えるものや増大傾向のものは診断と治療が推奨されています。
診断に有用なクッションサインとは
クッションサインとは、内視鏡検査で病変部を鉗子などで押した際に、へこんで元に戻る現象のことを指します。これは脂肪腫や嚢胞性病変など、柔らかい性質の腫瘍に特徴的で、良性の可能性を示唆する所見です。ただし、確定診断には超音波内視鏡(EUS)や生検が必要です。
粘膜下腫瘍の治療
粘膜下腫瘍の多くは平滑筋種や脂肪種など良性であることが多いため、内視鏡検査による経過観察を行います。しかし増大傾向や悪性を疑う所見を認めた際は切除を試みます。その際には内視鏡と腹腔鏡を合同で行う腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術(LECS)を行うことが多いです。
またGISTなどで転移を起こし切除不能な際には化学療法を行うことになります。
当院Drよりひとこと
粘膜下腫瘍は自覚症状に乏しく、偶発的に発見される腫瘍です。多くは良性であり、経過観察で十分ですが、中には悪性化するものもあります。定期的な検査で変化がある際は精査を行い、治療を検討することが重要です。当院では消化器病、内視鏡専門医をもった医師が適切な診断から治療まで提案させていただきます。気になる所見を指摘された際はお気軽にご相談ください