この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。
目次
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群とは、胃カメラや大腸カメラといった内視鏡検査で胃腸に炎症や潰瘍などの異常がないにもかかわらず、腹痛や下痢、便秘などの症状が繰り返し起こる病気です。
英語では「Irritable Bowel Syndrome(IBS)」と呼ばれます。
日本では10人に1人程度が該当するといわれるほど珍しくなく、20〜40代の働き盛りや学生さんに多く見られます。
自律神経が症状発現へ関与していることが疑われており、日々のストレスで症状が増悪することがあります。
そのため「通勤途中でお腹が痛くなる」などの表現がなされます。
まずは症状を医師へ相談し適切な内服薬などの治療を行うことで生活の質(QOL)を上昇させることを目標にします。
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群の症状は大きく4つのタイプに分けられます。
- 下痢型:突然の強い腹痛とともに急に下痢が起こる。
- 便秘型:お腹が張って便が出にくく、コロコロした便になる。
- 混合型:下痢と便秘を交互に繰り返す。
- 分類不能型:どれにも当てはまらないタイプ。
どのタイプでも共通しているのは、腹痛やお腹の不快感が排便でやわらぐことが多い点です。
また、ガスがたまりやすい、お腹がゴロゴロ鳴る、残便感があるなどの症状を伴うこともあります。
過敏性腸症候群の原因とストレスとの関係
過敏性腸症候群のはっきりとした原因はまだ完全にはわかっていませんが、主に以下の要素が関わっていると考えられています。
- 腸の運動の異常(蠕動運動が強すぎる、弱すぎる)
- 自律神経の乱れ
- 腸の知覚過敏(腸が普通以上に刺激に敏感)
- 腸内細菌のバランスの乱れ
そして、過敏性腸症候群の大きな要因として見逃せないのがストレスです。
緊張や不安を感じると自律神経の働きが乱れ、腸の動きが過敏になります。
これが「大事な場面でお腹が痛くなる」「通勤途中でお腹が痛くなる」といった形で現れます。
過敏性腸症候群の診断
過敏性腸症候群の特徴は血液検査や内視鏡検査などで明らかな異常(炎症性腸疾患や大腸がんなど)がないが症状を認めることです。
そのためまずは問診が大切になります。
簡単なチェックポイントとしては
- 週に3日以上お腹の不調がある
- トイレに行く回数が極端に多い・少ない
- 排便してもスッキリしない感じが残る
- 旅行や外出時にお腹が不安になる
などです。
その後内視鏡検査などを行うことで他の疾患を除外し診断を行います。
過敏性腸症候群の治療
過敏性腸症候群は、生活習慣の見直しとストレスケアが何より重要です。
- 規則正しい食事と睡眠を心がける
- 暴飲暴食や極端な食事制限を避ける
- 腸に負担をかける食品を知る
- ストレスをためない習慣(趣味、リラックス法など)
- 適度な運動で腸の動きを整える
症状が強い場合やコントロール困難な場合は、整腸剤、消化管運動調整薬、抗不安薬などの内服治療を組み合わせることがあります。
市販薬でも整腸薬や便秘薬、下痢止めが販売されていますが、過敏性腸症候群の場合、症状のタイプや原因に合わない薬を自己判断で使うと逆効果になることもあります。
例えば、下痢型の人が強い下痢止めを飲むと便秘型になり、腹痛が悪化することもあります。
市販薬を使うときも、できれば医師や薬剤師に相談したうえで選ぶことをおすすめします。
過敏性腸症候群に良い食べ物・避けたい食べ物
過敏性腸症候群の方にとって、食べ物の選び方はとても大切です。
ポイントは腸を刺激しにくい食品を選ぶことです。
◎ 比較的安心な食品
ごはん、うどん、白身魚、鶏ささみ、豆腐、にんじん、かぼちゃ、バナナ、ヨーグルト(合う人のみ)
△ 注意したい食品
アルコール、カフェイン(コーヒー)、脂っこいもの、香辛料、炭酸飲料、冷たいもの
最近では、低FODMAP食と呼ばれる食事法(腸で発酵しやすい糖質を減らす)が症状改善に有効とされています。
自分だけで厳しく制限しすぎるのではなく、医師や管理栄養士と相談してバランス良く取り入れましょう。
当院Drよりひとこと
過敏性腸症候群は、命に関わる病気ではありませんが、繰り返す腹痛や下痢・便秘が日常生活の大きなストレスになります。
一人で悩まずに、専門医に相談し、生活習慣やストレスケアを含めた総合的な治療で上手に付き合っていきましょう。
当院では、消化器内科専門医が丁寧な問診と必要な検査を行い、一人ひとりの症状に合わせた治療法をご提案しています。
気になる症状が続く方は、どうぞお気軽にご相談ください。