機能性ディスペプシア

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消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。

機能性ディスペプシアとは

機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)は、「症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのにもかかわらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患」とされています。簡単に言いますと慢性的な胃の不快感や食後の痛み、張り症状があり、QOL低下をきたす疾患です。血液検査や内視鏡検査で特徴的な所見がないため、医療機関を受診しても問題なしや気のせいと言われてしまうことも多いです。食事内容やストレスが原因で起こるとされており、胃の蠕動異常や十二指腸の炎症が関与していることが知られています。有病率は高く、腹部症状で受診する40-50%がFDという報告もあります。詳細な問診と内服加療にて軽快することも多く、QOL低下を防ぎ過ごせることを目指します。

以下のような症状が1ヵ月以上続く場合は、機能性ディスペプシアの可能性があります。

  • 食後すぐにお腹が張る(膨満感)
  • 少量の食事で満腹になる(早期飽満感)
  • みぞおちの痛みや焼けるような感覚
  • げっぷ、吐き気、食欲不振
  • 症状に対して検査をしたが異常を認めない

機能性ディスペプシアの原因

機能性ディスペプシアは非常に多くの因子が絡まり症状を引き起こしていると考えられています。消化管運動能や知覚過敏、十二指腸の炎症、腸内細菌といった生理的要因と社会的なストレスや性格などの心理的要因が報告されています。現代のストレスが多い社会の影響で有病率上昇も報告されています。

機能性ディスペプシアの検査

血液検査や内視鏡検査での特徴的所見を認めないため、詳細な問診が重要となります。症状の出現するタイミングや経過を確認します。別の疾患が隠れている可能性もあるため、問診の内容から必要に応じて血液検査、腹部超音波検査、X線、CT検査、内視鏡検査を提案致します。

機能性ディスペプシアと他疾患

機能性ディスペプシアは症状の特性上様々な疾患との鑑別が必要となります。逆流性食道炎と過敏性腸症候群との合併も多く、機能性消化管障害(Functional gastrointestinal disorder: FGID)として知られています。また最近では食物アレルギーや早期慢性膵炎との関連も報告されており、診断から治療まで幅広い分野が関わってきます。

機能性ディスペプシアの治療

社会的環境も強く症状に影響するため、ストレスが過剰な場合は環境の整備が1つの方法です。内服加療では酸分泌抑制薬や運動機能改善薬(胃の動きを調整する)を用います。それでも改善が乏しい場合は漢方薬や抗不安薬を併用することもあります。

最近では膵疾患との関連も報告されており、病態に合わせた治療を行うことが推奨されています。

当院Drよりひとこと

機能性ディスペプシアは、診断がつきにくいことから不安を多く抱えて受診される患者さんが多い疾患です。目に見える異常がなくてもつらい症状を引き起こしますが、正しい知識を持ち、生活習慣の見直しや医師のアドバイスを受けながら、自分に合った治療を続けることが大切です。当院ではガイドライン作成にも関わっている消化器病専門医、指導医が診療を行っておりますので、気になることがありましたら遠慮なく相談してください。