アニサキス症

この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。

アニサキス症とは

アニサキス症は、アニサキスという寄生虫が人の体内に侵入することで起こる食中毒の一種です。主にサバ、サンマ、アジ、イカ、サケ、カツオなどの生魚や魚介類を食べた後、アニサキスの幼虫が胃や腸の壁に刺入することで、局所的なアレルギー反応が起こり激しい腹痛などの症状が引き起こされます。日本では特に寿司や刺身の習慣があるため、年間を通して報告数が多い疾患です。

胃カメラ検査を行って内視鏡でアニサキスを摘出すると、ほとんどの場合は痛みなどの症状が速やかに解消します。しっかりとアニサキスの頭部を把持して除去する必要があるため、内視鏡専門のクリニックでの検査が推奨されます。

症状

アニサキス症には主に胃アニサキス症と腸アニサキス症があります。いずれも突然現れる強い症状が特徴です。

(胃アニサキス症)

魚を食べてから数時間から、遅くとも24時間以内に急激なみぞおちの痛みや嘔気が起こります。

(腸アニサキス症)

食事摂取をしてから半日から数日後に腹痛と嘔気で発症します。小腸にアニサキスが刺入することで、腸管が浮腫み腸閉塞のような症状となることもあります。

原因

原因は、アニサキス幼虫を含む魚介類の生食です。以下のような魚介類に寄生していることがあります。

  • サバ、イワシ、アジ、サンマ
  • イカ、サケ、カツオ、ホッケ

特に鮮度が落ちた魚では腸から筋肉に移動していることがあるため注意が必要です。

治療

アニサキス症の治療は、寄生しているアニサキスを除去することが基本です。胃カメラ検査を行って内視鏡でアニサキスを摘出すると、ほとんどの場合は痛みなどの症状が速やかに解消します。しっかりとアニサキスの頭部を把持して除去する必要があるため、内視鏡専門のクリニックでの検査が推奨されます。

  • 胃アニサキス症の場合:内視鏡により直接幼虫を摘出
  • 腸アニサキス症の場合:自然排出を待ちながら対症療法(痛み止め・点滴など)
  • 重症例では入院管理が必要になることもあります

自然治癒の可能性

アニサキスの幼虫は人間の体内では長く生存できないため、通常1週間以内に自然に死滅します。特に腸に寄生した場合は内視鏡での摘出が困難なため、自然治癒を前提に対症療法が行われます。ただし症状が強い場合や経過が長引く場合は、医療機関での受診が必要です。

アニサキス症の予防

アニサキスによる局所的なアレルギーのため、これまでに罹患したことがある方は繰り返してしまうことがあります。そのような方は以下のような対策を行うことで予防につながります。

  • 調理前処理としてアニサキスの除去作業を実施します。アニサキスは体長約2〜3cmであり、肉眼にて識別可能です。調理工程に先立ち、十分な目視検査を行い、発見した場合は速やかに除去してください。
  • 加熱または冷凍処理済の魚類を選択することが推奨されます。アニサキス幼虫は、-20℃以下で24時間以上の冷凍処理、あるいは70℃以上の加熱処理によって確実に死滅します。

アレルギー症状との違い

アニサキス症は、主に局所的なアレルギー反応によって引き起こされます。一方で、アニサキスアレルギーはアニサキスをアレルゲンとする全身性のアレルギー反応であり、一般的な食物アレルギーと同様に、蕁麻疹症状や、重症の場合は呼吸困難感や血圧低下などを伴うアナフィラキシー症状を引き起こすことがあります。アニサキスアレルギーは命に関わる状態にもなり得るため、特に注意が必要です。

当院Drよりひとこと

アニサキス症は激しい腹痛を伴うことが多い疾患ですが、正しい知識と対策で予防することが可能です。生魚を食べる際には十分な注意を払い、症状が現れたら早めに医療機関を受診しましょう。内視鏡での診断・治療を行うことで速やかに症状改善を目指すことができます。当院は消化器病と内視鏡専門医である医師が対応するため、安心して受診し相談してください。