食道がん

この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。

食道がんとは

食道がんは、細長い管である「食道」にできる悪性の腫瘍です。初期のころはほとんど症状がなく進行が早いのが特徴です。これは食道が他の臓器と異なり、漿膜(しょうまく)と呼ばれる、臓器を覆う膜を持たないため、周囲の臓器へと転移を起こしやすいためです。

「飲み込みにくい」や「つかえ感」などがある場合は早めの内視鏡検査を推奨します。

食道がんの症状

食道がんは初期に症状がほとんど出ないことが多いです。飲み込みにくさや刺激物がしみるなどの症状が徐々に出現し、進行するにつれてつかえ感や体重減少が起こることもあります。

食道がんの原因

食道がんの主な原因は、慢性的な炎症や飲酒、喫煙の習慣です。特にお酒に弱い体質の方が毎日多量の飲酒をすると、体内で分解されにくいアセトアルデヒドが粘膜にダメージを与えやすくなります。お酒を飲むと顔が赤くなる体質の人(フラッシャー)はリスクが高いとされています。また、熱い飲み物や刺激が強いものを好む習慣も、慢性的な食道の刺激となり、発症のリスクを高めます。近年では逆流性食道炎やバレット食道から腺がんが発生するケースも増えています。

食道がんの検査

食道がんが疑われるときは、内視鏡検査(胃カメラ)が最も推奨されます。食道粘膜の変化を直接観察し、必要に応じて組織を採取(生検)して調べます。病期(ステージ)を把握するためには、CT検査や超音波内視鏡(EUS)、PET検査などを組み合わせて、がんの深さやリンパ節、他の臓器への転移の有無を精査します。

食道がんの治療

食道がんの治療方針は、ステージ(病期) によって異なります。

早期食道がんでは粘膜内にとどまっている状態のため、内視鏡治療が推奨されます。内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)は入院が必要ですが、早期であれば根治が望めます。

進行がんでは手術加療もしくは化学療法(抗がん剤治療)を行います。CT検査などで転移の有無を評価し治療法を選択します。

食道周囲のリンパ節への転移が見られることが多く、手術や化学放射線療法が検討されます。

当院Drよりひとこと

食道がんは初期に症状を感じにくい疾患ですが、早期発見ができれば内視鏡的治療も可能です。つかえ感や飲み込みにくさを感じた際には早めの内視鏡検査を検討してください。当院では消化器病、内視鏡専門医による内視鏡検査により早期に発見し治療につなげることができます。気になる症状がある際は遠慮なくご相談ください。