この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。
萎縮性胃炎とは
萎縮性胃炎は、胃の粘膜が炎症を起こし、胃の粘膜が萎縮してしまう病気です。主な原因として、ピロリ菌の感染が知られています。粘膜が萎縮することで胃酸分泌の低下などが起こり、様々な症状を引き起こし、進行することで胃がんのリスクとなります。
萎縮性胃炎の症状
萎縮性胃炎は胃粘膜の萎縮により胃酸分泌低下が起こり、消化不良が起こることがあります。また胃の蠕動運動障害を引き起こすこともあり、胃痛や胃もたれ、嘔気や食欲不振となることもあります。重度に進行すると胃酸分泌低下により鉄分の吸収障害が起こり、貧血に至ることもあります。
萎縮性胃炎の原因
萎縮性胃炎の最大の原因とされているのが、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)菌の感染です。この菌が長期間胃の中に存在すると、慢性的な炎症が起こり、やがて胃の粘膜が薄くなり萎縮していきます。ピロリ菌の感染は幼少期に起こることが多く、自覚症状がないまま進行することも少なくありません。
ピロリ菌以外にも、萎縮性胃炎を引き起こす原因はいくつかありますが、最も多いのはやはりピロリ菌感染です。その他の要因については次のセクションで詳しく説明します。
ピロリ菌以外にも高齢による自然な粘膜の萎縮や自身の免疫による自己免疫性胃炎が原因になることがあります。
胃がんとの関連
萎縮性胃炎が長期間続くと胃がんのリスクが上がることが知られています。胃がん発症の確率は健康な胃に比べて数倍高くなるとされています。そのため、定期的な内視鏡検査が重要です。
萎縮性胃炎の治療
萎縮性胃炎そのものを完全に元に戻す治療法はありませんが、進行を食い止めたり、がん化のリスクを減らしたりする治療は可能です。
ピロリ菌除菌による進行抑制や内服薬による炎症をコントロールすることで炎症が少ない状態を維持することを目標にします。
また定期的な内視鏡検査による胃がんの早期発見と早期治療を行うことが重要です。
当院Drよりひとこと
萎縮性胃炎は自覚症状が乏しいため、気づかないうちに進行していることがあります。ピロリ菌感染の有無を早めに確認し、除菌治療と生活習慣の見直しを行うことが、将来的な胃がんの予防にもつながります。また、除菌後もリスクは下がりますが、胃がんのリスクは残るため定期的な内視鏡検査を心がけてください。
当院では消化器病、内視鏡専門医が検査から治療まで担当するため遠慮なく相談してみてください。