胃・十二指腸潰瘍

この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。

胃・十二指腸潰瘍とは、胃や十二指腸の粘膜が胃酸や消化酵素などの影響でただれて、傷ができた状態を指します。胃は食べ物を消化する強い酸を出していますが、通常は粘液で守られています。このバランスが崩れると、粘膜が傷つき、潰瘍が発生します。

潰瘍ができる場所によって、胃にできれば「胃潰瘍」、十二指腸(小腸の入り口付近)にできれば「十二指腸潰瘍」と呼ばれます。

胃・十二指腸潰瘍の症状

潰瘍の代表的な症状は、胃潰瘍であればみぞおちの痛み、十二指腸であれば右上腹部もしくは背部の痛みです。
空腹時や夜間にお腹が痛くなり、食事をすると一時的に和らぐのが十二指腸潰瘍に多く、逆に胃潰瘍は食後に痛むことが多いとされています。

ほかに、以下のような症状が見られることもあります。

  • 胸やけや胃のもたれ
  • 吐き気
  • 食欲不振
  • 黒い便(潰瘍から出血するとタール便と呼ばれる黒色便になる)
  • 吐血(出血が多い場合)

痛みが軽くても、放置すると出血や穿孔(穴があく)を起こすことがあります。

胃・十二指腸潰瘍の原因

主な原因は以下の2つです。

  1. ピロリ菌感染
     ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃に住みついて炎症を起こすことで粘膜を傷つけ、胃酸によるダメージを受けやすくします。長年感染していると潰瘍を繰り返すことがあります。
  2. 薬の影響(NSAIDsなど)
     痛み止め(ロキソニン、イブなど)や一部の抗炎症薬を長期間服用していると、胃の粘膜が弱くなり潰瘍を起こすことがあります。

ストレス、喫煙、過度の飲酒は、胃酸の分泌増加や血流の低下を引き起こし、潰瘍の悪化につながる可能性があります。

また初期の胃がんは胃潰瘍と勘違いされてしまうものもあり、治癒したことをしっかり確認することも大切です。

胃・十二指腸潰瘍の検査

潰瘍の診断には内視鏡(胃カメラ)が最も有効ですが、補助的に血液検査も行います。

血液検査では

  • ピロリ菌抗体検査
  • 貧血の有無をみる(出血が続いていると貧血になります)
  • 炎症反応(CRPなど)

を確認します。

内視鏡検査では潰瘍の場所、大きさ、出血の有無、必要に応じて生検を行い胃癌を否定します。

これらの結果をもとに治療方針を決めます。

胃・十二指腸潰瘍に良い食事と避けたい食べ物

潰瘍の治療には、胃に優しい食事も大切です。
刺激の強い食品や胃酸の分泌を促すものは避けましょう。

おすすめ

  • 消化に良いおかゆ、煮込みうどん
  • 白身魚、豆腐、鶏ささみ
  • 野菜は柔らかく煮て

避けたいもの

  • 塩分が濃いもの
  • 辛いもの、酸っぱいもの、コーヒー、アルコール
  • 揚げ物など脂っこい料理
  • 食べすぎや早食い

少量ずつ回数を分け、よく噛んで食べることも大切です。

胃・十二指腸潰瘍の治療

治療は主に薬物療法が中心です。

  • 胃酸を抑える薬(P-CABやPPI、H2ブロッカーなど)
  • 胃粘膜を保護する薬
  • ピロリ菌感染が確認された場合は除菌療法(抗菌薬+胃酸抑制薬)

多くの場合、数週間〜数か月で潰瘍は治癒しますが、ピロリ菌を除菌しないと再発しやすくなります。胃・十二指腸潰瘍と診断された際にはピロリ菌などの原因も検索するようにしましょう。

当院Drよりひとこと

胃・十二指腸潰瘍そのものは、適切に治療すれば命に関わることはほとんどありません。しかし、放置した場合には、大量出血や穿孔による腹膜炎などで生命に影響することがあります。症状がある場合は医療機関で検査を受けることが推奨されます。また、ピロリ菌感染を未治療のままにすると、潰瘍が再発するだけでなく、将来胃がんになるリスクも高まることが報告されています。

当院では、消化器病および内視鏡の専門医が診察、診断、治療まで一貫して担当します。気になる症状がある際は我慢せずに早めに相談してください。