この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。
ヘリコバクターピロリ菌とは
ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)は、胃の粘膜に生息するらせん状の細菌です。日本人の中高年では約半数が感染しているとも言われており、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんの原因にもなることが知られています。1980年代にこの菌の存在と胃の病気との関連が明らかになり、現在では除菌治療が保険適用されるほど重要な菌とされています。除菌治療は1週間薬剤を内服するだけですので、ピロリ菌を指摘された場合は将来的なリスクを減らすためにも行うことを推奨します。
また除菌後も定期的な内視鏡検査を行うことで、早期発見、治療につなげることが重要です。
ピロリ菌感染の原因
ピロリ菌に感染する主な原因は、口からの経路です。幼少期に衛生環境が整っていない状況で感染するケースが多く、大人になってから新たに感染することはまれとされています。主な原因は以下の通りです。
- 親子間の食べ物の口移し
- 井戸水や衛生状態の悪い飲料水の摂取
ピロリ菌の検査
胃の不調がある場合や健康診断などでピロリ菌感染が疑われる場合、以下のような検査が行われます。検査方法には非侵襲的なものと、内視鏡を使用する方法があります。
- 尿素呼気試験(検査用の薬を内服し、息を2回ほど吐いて、呼気中の成分を調べ判定します)
- 便中抗原検査(便を提出し、便中に含まれるピロリ菌抗原を調べます)
- 血液・尿による抗体検査(ピロリ菌に対する免疫反応を調べます)
- 内視鏡下生検による迅速ウレアーゼ試験、組織鏡検法、培養検査(内視鏡検査を行った際に検体を採取し検査します)
- 胃液を用いたPCR検査(内視鏡検査時に胃液を採取し検査します)
ピロリ菌と胃がんの関係
ピロリ菌に感染すると、慢性胃炎を引き起こし、長期的に胃の粘膜がダメージを受けることで、萎縮性胃炎や腸上皮化生を経て胃がんに至るリスクが高まります。実際、胃がん患者の大多数はピロリ菌感染歴があるとされており、感染予防および早期の除菌治療が胃がん予防において重要です。
ピロリ菌の治療
ピロリ菌が陽性と判定された場合、抗菌薬を使用した除菌療法が行われます。通常は2種類の抗生物質と1種類の胃酸分泌抑制薬を1週間内服し、除菌判定を数週間後に行います。除菌が成功すれば再発のリスクは大きく下がりますが、除菌後も以下のような点に注意が必要です。
- 除菌判定(再検査)を必ず行う
- 除菌後でも胃がん発症リスクはゼロではないため、定期的な内視鏡検査を継続
- 生活習慣(塩分・喫煙・飲酒)の見直し
当院Drよりひとこと
ヘリコバクターピロリ菌は、胃の病気や胃がんと深く関係する重要な菌です。検査によって早期に感染を発見し、適切な除菌治療を行うことで将来的なリスクを大幅に下げることが可能です。また除菌後も定期的な内視鏡検査を行うことで、早期発見、治療につなげることが重要です。気になる症状がある方や感染歴がある方は、消化器、内視鏡専門医が診療を行う当院へご相談ください