この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。

クローン病とは

クローン病とは、口から肛門までの消化管のさまざまな場所に慢性的な炎症が生じる病気です。代表的な炎症性腸疾患(IBD)には潰瘍性大腸炎とクローン病があり、その中でもクローン病は小腸と大腸に多く発症し、腸の壁全体が深く傷つくのが特徴です。10代後半から30代の若い世代で発症することが多く、長期にわたる経過観察と治療が必要になります。難病にも指定されており病状が進むと手術加療が必要になることもあることから、食事や内服加療など医師と相談し行っていくことが大切です。

クローン病の症状・初期症状

クローン病の初期症状として多いのは、下痢、腹痛、体重減少です。これらは一時的ではなく、慢性的に続くのが特徴です。また、血便や発熱、肛門周囲の膿瘍、痔ろうがみられることもあります。進行すると炎症を繰り返したことにより腸管が狭窄することで腸閉塞を起こすことや、場合によっては瘻孔(腸どうしや他の臓器とつながってしまう)や穿孔(腸に穴が開いてしまう)を起こすこともあるため、軽い症状でも放置せず早めの診断が大切です。

クローン病の原因

クローン病のはっきりとした原因はわかっていませんが、次のような要因が関わっていると考えられています。

  • 遺伝的要因(家族にIBDの患者がいる場合、発症リスクが高い)
  • 腸内細菌のバランス異常
  • 免疫機能の異常反応

これらが複雑に絡み合い、腸の粘膜が自分の免疫に攻撃されて炎症が長引くとされています。

クローン病の診断

発熱、腹痛、下痢、血便などの症状で受診されることが多いです。慢性的に繰り返すエピソードや口内炎、痔ろうの有無などを問診で確認します。検査としては血液検査や腹部X線、CT検査により炎症の範囲を評価し、一般的な腸炎を除外します。その後大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)を行い、特徴的な所見を検索します。特徴的な内視鏡所見には縦走潰瘍(縦に続く潰瘍)、敷石像(腸の粘膜が石を敷き詰めたようにボコボコと盛り上がってみえる)などがあります。内視鏡検査の際には生検を行い、病理検査を行うことも診断に有効です。

クローン病とストレスの関係

クローン病はストレスが直接の原因になるわけではありませんが、ストレスや過労は症状を増悪させ、再燃(症状がぶり返す)するきっかけになることがあります。病気とうまく付き合うためには、治療だけでなく、心と体のバランスを整える生活も大切です。

クローン病の治療

クローン病の治療の基本は、炎症を抑え症状を改善し、再発を防ぐことです。主に次のような治療を組み合わせます。

  • 5-ASA製剤(軽症例での炎症抑制)
  • ステロイド薬(炎症が強い場合)
  • 免疫調整薬や生物学的製剤(中等症以上で長期管理)
  • 狭窄や膿瘍がある場合の外科手術

状態に合わせて薬を使い分け、症状が落ち着いた後も再燃を防ぐ維持療法が大切です。

現在では多くの薬が開発されており、適切な治療により生活の質(QOL)を保った生活を送ることが可能です。

クローン病の食事

食事はクローン病の管理でとても重要です。腸に負担をかけないことが基本で、低脂肪・低残渣食(食物繊維が少ない食事)を心がけます。

  • 脂っこい料理や刺激物を避ける
  • 食物繊維の多い野菜や果物は量に注意
  • 消化の良い食品を少量ずつ
  • 栄養バランスを意識する

病状によっては腸管安静のために経腸栄養製剤を用いることもあります。

病状に応じて個人差があるため、医師や栄養士と相談しながら無理のない食生活を続けることが大切です。

当院Drよりひとこと

クローン病は初期症状が発熱、下痢、腹痛であり急性胃腸炎と間違われてしまうことが多いです。病状が進行すると腸閉塞や穿孔、瘻孔などが起こってしまい手術加療が必要になることもあり、適切な管理が大切になります。医師と相談し適切な食事や内服加療を行うようにしましょう。当院では血液検査や大腸カメラなどを用いて、専門医による診断から治療まで行えます。下痢を繰り返す、血便があるなど気になることがありましたら早めに相談してください。