この記事を書いた人

消化器病学会専門医、内視鏡学会専門医、肝臓専門医であり日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に消化器疾患の分野に力をいれており、苦痛の少ない内視鏡検査によるフォローや大腸ポリープ切除、日々のQOLに関わる機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管疾患、現在注目を集めている膵疾患など幅広く診療する。
2025年秋に武蔵小杉でクリニックを開業予定。
急性肝炎とは
急性肝炎とは、ウイルス感染や薬剤、アルコールなどを原因として、短期間で肝臓に炎症が起こる疾患です。数週間から数か月の経過で自然に回復することもありますが、中には重症化するケースもあるため、早期発見と適切な対応が大切です。
慢性肝炎と異なり、急性肝炎は比較的急速に発症し、治療により完治することが多いのが特徴です。
急性肝炎の初期症状
初期には風邪のような症状が現れることがあり、見逃されがちです。代表的な初期症状には以下のようなものがあります。
- 倦怠感(だるさ)
- 食欲不振
- 吐き気
- 微熱
- 右上腹部の違和感や痛み
これらの症状が続いたあと、目や皮膚が黄色くなる「黄疸(おうだん)」が出ることがあります。黄疸が出た場合は、肝臓に何らかのトラブルが起きている可能性が高く、早めの受診が必要です。
急性肝炎の原因
急性肝炎の原因として代表的なのが「ウイルス性肝炎」です。特にA型・B型・C型などの肝炎ウイルスによる感染が多く見られます。
そのほか、以下のような原因もあります。
- 薬剤性肝炎(抗生物質、解熱鎮痛薬など)
- アルコール性肝炎(過度な飲酒)
- 自己免疫性肝炎(免疫の異常によるもの)
- サプリメントや健康食品による肝障害
近年では、市販薬や健康食品の長期服用によって肝機能障害を引き起こすケースも報告されています。
急性肝炎の診断
急性肝炎を診断する際には、血液検査で肝機能の数値を確認するのが基本です。特にAST(GOT)やALT(GPT)という肝酵素の数値が大きく上昇している場合、急性肝炎が疑われます。
黄疸の有無、血中ビリルビン濃度、プロトロンビン時間(肝臓の合成機能を見る指標)なども判断材料になります。必要に応じて、ウイルス検査や画像検査(腹部超音波検査、CTなど)も行います。
急性肝炎はうつる?感染のリスクについて
急性肝炎のうち、「ウイルス性肝炎」は感染力があります。たとえば、
- A型・E型肝炎:汚染された飲食物から経口感染
- B型・C型・D型肝炎:血液や体液を介して感染(輸血、性行為、母子感染など)
一方、薬剤性やアルコール性など、ウイルスが関係しない肝炎は他人にうつることはありません。
ウイルス性肝炎の感染予防には、ワクチン接種や衛生管理が有効です。特に海外渡航前には、A型肝炎のワクチンを検討することが勧められます。
急性肝炎の治療
急性肝炎の治療は、原因によって異なります。基本的には、肝臓を休ませることが最優先です。
- ウイルス性肝炎(A型、B型など):安静と栄養管理が中心。重症例では抗ウイルス薬や入院管理が必要。
- 薬剤性肝炎:原因薬剤の中止が第一。肝機能の回復を待ちます。
- 自己免疫性肝炎:ステロイドなどの免疫抑制剤を使用する場合があります。
軽症であれば外来で経過観察可能ですが、黄疸や出血傾向がある場合は入院が必要となることもあります。
急性肝炎の入院期間はどれくらい?
入院期間は病状によって異なりますが、一般的に1~2週間程度が目安です。ただし、B型肝炎の劇症化や重度の肝不全を伴う場合は、数週間~1か月以上の入院が必要になることもあります。
定期的な血液検査で肝機能が改善しているかを確認しながら、症状の安定を見て退院の可否が判断されます。
急性肝炎は適切な治療と生活管理により多くの場合で回復が望めますが、見逃されやすい初期症状に注意することが重要です。「なんとなくだるい」「食欲がない」といった症状が続くときは、血液検査で肝機能をチェックする意味でも一度医療機関を受診してみてください。当院では血液検査による肝機能チェックや腹部超音波検査、各種ウイルス検査にも対応しています。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。